住宅にとって、数年に一度の外壁塗装は避けては通れないものです。ケースにもよるものの、80万円~150万円ほどかかると言われている外壁塗装ですが、火災保険で支払えると聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。どのような場合に火災保険が利用できるのか、利用する際の注意点はないのか解説していきます。
1.火災保険とはどんな保険?どんな種類がある?
「火災保険」という名前から、住宅が火災にあった時のための保険だと思っている方も多いのではないでしょうか。実際は、火災保険は火災だけでなく、落雷や風災、雷や雪災、爆発や雹(ひょう)などによる被害が補償対象になっています。
住宅に対する火災保険には、次の4種類があります。ご自分が加入している火災保険の種類をまずは確認してみることをおすすめします。
1-1.住宅火災保険
最も一般的な火災保険で、火災・風災・雪災・ひょう・落雷・爆発・破裂などの基本的な自然災害が補償対象となっています。
1-2.住宅総合保険
住宅火災保険の補償内容に加えて、破損や漏水など自然災害以外の災害も補償の対象になります。盗難やいたずらによる被害も対象に入ります。
1-3.オールリスクタイプ
住宅総合保険よりもさらに広範囲をカバーする火災保険です。保険会社によって内容は異なりますが、被害の代償に関わらず補償される、補償範囲を細かく設定できるなど加入者のニーズに柔軟に対応するのが特徴です。
1-4.特約火災保険
住宅ローンを利用して住宅を建てた場合に加入が義務となっている火災保険です。家財に対する補償がないなど、保障範囲は狭いものとなっています。
2.外壁の塗装に火災保険が使える?その条件とは?
自然災害によって外壁の塗装の修理が必要となった場合、火災保険に加入していれば保障の対象となります。ただしそれには条件があるので注意が必要です。
2-1.被災した災害を保障する火災保険に加入していること
現在加入している火災保険がカバーしていない災害にあってしまった場合、残念ながら補償の対象外となってしまいます。ちなみに水災については、ほぼ全ての火災保険で標準プランには含まれていません。
2-2.「自然災害」による被害であること
単なる「自然現象」ではなく、「自然災害」による被害でなければ、保険の適用外です。保険の契約内容を確認してみると、「風災とは最大瞬間風速20m/秒以上」などと定められています。そうなると台風や竜巻なら保障の範囲内になりますが、強風程度ではたとえ被害にあったとしても保険は適用されないと考えられるでしょう。
2-3.工事費用が免責金額を上回っていること
加入している火災保険には、必ず免責金額が設定されています。たとえば加入している火災保険の免責金額が「20万円以上」の場合、修理費用が17万円だったとしたら免責金額を下回っているので保険金は支払われません。免責金額も今一度確認してみましょう。
2-4.自然災害が発生してから3年以内に申請していること
自然災害が発生してから3年以内なら保険金が請求できると保険法第95条に定められているため、どの保険会社の火災保険でも3年以内なら後から請求できます。ただし、保険金が支払われるまでには保険鑑定会社による被害の検証が行われます。時間が経ってしまうと実際の被害状況の検証が難しくなりますので、保険適用の可能性を上げるためには速やかに申請した方がベターです。
3.火災保険が支払われるケースと支払われないケース
外壁の塗装が必要になった場合でも、保険鑑定会社の検証の結果によっては火災保険が支払われない場合もあります。火災保険が支払われるケースと支払われないケースをみていきましょう。
3-1.火災保険が支払われるケース
火災保険の対象となっている自然災害によって外壁の塗装が必要になった場合に、保険金は支払われます。たとえば「台風で飛ばされてきた木や石などが外壁に直撃して損傷した」「豪雨で土砂崩れが発生し外壁が腐食した」「屋根から落下した雪の塊が外壁に直撃して破損した」など、案外外壁にも被害が及ぶケースがあります。自然災害の被害にあってしまった際には、外壁も忘れずに現状確認をしましょう。
3-2.火災保険が支払われないケース
あくまで自然災害による被害でなければ対象にはならないので、経年や老朽による劣化では保険金は支払われません。外壁材の特性による摩擦や変色、変質、外壁に発生したコケやカビ、サビなどは対象外です。
また、塗装した際の業者の施工ミスで外壁にあらかじめ何らかの影響が出ていた場合、自然災害によって被害が拡大したとしても保険は支払われません。
4.火災保険で外壁の塗装をする際の注意点とは?
「火災保険を使って無料で外壁塗装ができます!」などと工事契約を迫る悪徳業者が存在していて、トラブルが急増しているのはご存知でしょうか。主な悪徳業者の手口を紹介します。
4-1.「火災保険を使えば無料で外壁塗装ができます」という文言
火災保険は自然災害による被害をカバーするものです。災害に関係なく原状回復以上のリフォームをすることは、実際には保険の対象外です。被害にあっていないのにも関わらず火災保険を使って無料で外壁塗装ができるというのは間違いです。契約後に高額の手数料を請求してくる場合もあるので要注意です。
4-2.虚偽の報告で火災保険を請求
経年による外壁の劣化にも関わらず「火災保険で直せますよ」という業者にも注意しましょう。自然災害による被害を装って火災保険を申請するよう施主にも強要してきても、決して指示通りに嘘の申請をしてはいけません。施主まで詐欺行為をしたとみなされてしまう場合もあるのです。
4-3.高額の工事を追加される
免責金額以下の場合は火災保険の対象外となってしまうため、不必要な改修工事を追加して相場以上の補修費用を請求してくる悪徳業者もいます。免責金額を超えて保険金がおりたとしても、無駄な工事費用に充てなくてはならなくなってしまいます。
5.まとめ
火災保険は火事だけでなく自然災害でも適用できる保険です。ただし、あくまでも被害にあった際の補償であって、経年劣化では利用できません。悪徳業者も存在するので、業者選びには十分気をつけましょう。また、被害にあった時にはさまざまな手続きがあり生活にも不便が生じてバタバタしてしまうものです。万一の時に備えて、加入している火災保険の種類や補償の範囲について確認しておくと安心です。